制御盤におけるノイズへの理解
【 自然ノイズと人工ノイズ 】
“自然ノイズ”とは文字の通り、自然界にそもそも存在するノイズのことです。この自然ノイズが発生する代表例といえば地電流や落雷による雷サージなどがあります。一方、”人工ノイズ”とは基本的に自然ノイズではないノイズになります。普段何気に使用しているパソコンや携帯電話も人工ノイズの発生源になります。ノイズの大きさはものによって異りますが、電気によって動くものは必ずノイズの発生源になります。
【 人工ノイズの現状 】
上記で述べた定義に当てはめれば、半導体製造装置用の制御盤や工作機械用の制御盤に限らず、すべての制御盤はノイズの発生源と言えます。つまり制御盤は設計を終えた段階ですでにノイズが存在してることになります。製造業に携わる人であればパソコンや携帯電話や制御盤などを製作する場合には、すくなからずノイズが発生していると考えるべきです。ノイズを完全にゼロにすることは電気の性質上不可能になり、各分野のノイズの発生を考慮した上で、その対策を実施した製品とすることで、市場に商品として流通しているのです。
【 ノイズ障害 】
ノイズが他の機器に影響を与えることをノイズ障害といいます。ノイズ障害にも様々ありますが、携帯電話がペースメーカーに影響を与えるというのは代表的なノイズの問題です。何気なく発生しているノイズですが、その危険性は場合によっては非常に大きいものといえます。私達の生活には至るところに電気部品があり、ノイズの問題は看過出来ない問題となっています。
【 EMC規制 】
1980年以降にノイズ問題は深刻な環境問題として取り上げられてきました。このことにより電子機器に一定の規制がされるようになり、エミッション(電磁的妨害の放射)の対策とイミュニティ(電磁的妨害に対する耐性)の対策の両方が求められるようになりました。”エミッション対策”のことを”EMI対策”、”イミュニティ対策”のことを”EMS対策”といいます。EMIとEMSの両方を対策することを”EMC(電磁的両立性)”と表現されます。ノイズの問題を解決するためには、ノイズを出す側と受ける側が共に対策を実施する必要があるとするのが、EMCの考え方となります。EMC規制は国によって、少し異なります。
EMC関連規格は、日本ではVCCI規格、欧米やEU域内ではEN規格があります。制御盤の設計・製作で使用する電気部品に”CE”のマークが入っている部品はEN規格の中でニューアプローチ指令(特性分野別にEU共通の安全基準を設けたもの)の基準を満たした製品となります。EUはノイズの規制が厳しいエリアであり、CE認証の製品は他国で審査が必要のない場合もあるほど信頼性の高いものと言えます。
【 ノイズに対して 】
ノイズ問題が環境問題として取り上げられるようになり、2013年現在では電気部品のほとんどがノイズ対策を施しているといえます。制御盤の設計・製作をするためには電気部品を多く使う必要がありますが、その部品の選定や配線方法によってノイズによる影響の軽減を実現します。高品質の制御盤を設計・製作するためにはノイズを上手くコントロールする知識と技術が求められます。